お 芝 居 を 観 て

 新橋演舞場 観劇日(2003.10.17夜(1階)/10.20昼(3階))

月形半平太
行友李風原作/土橋成男脚本/宮永雄平潤色・演出

場内が暗くなり、話の哀しい結末を暗示させるような、荘厳な音楽。
幕が開くと、そこでは祇園の華やかな宴会。ちょうど舞踊の藤娘のように暗闇からパッと明るい場へに転換がすばらしい。英太郎さんの女将が、いい。
席は、18列10。1階の後ろから3番目、花道からは、2メートルもない。
月様が花道から登場。しっかりと月様の横顔が、後ろ姿が、拝見できました。黒の着流しの美しい月様。だが、痩せられたので、顎のラインにやや疲れが見え、胸が痛みました。
『月様、雨が』と、見せ場の台詞。うっとりとするところで、何故か客席から笑い声!
『春雨じゃ』の名場面が興ざめとなってしまいました。

大乗院の大立ち回り。舟木さんは、数日前、怪我をされ、手の白い包帯が痛々しいけれど、迫力ある立ち回り。はじめは、『格好いい!』と、形が決まるたびに拍手。でも、後半は、舟木さん曰く『斬られても斬られても主役は、なかなか死なない』とおっしゃるように、満身創痍で、倒れられないのです。鬼気迫る形相に、胸が苦しくなりました。桂さん、早瀬さんが、駆けつけた時は、もう、月様は、錯乱状態。目も見えず、刀を振り回す月様の姿に、涙が止まりませんでした。不動明王の目から光が放たれたのは、アニメ的でした。それにもまして、月様の国を思う一途さと孤独と、男の色気に圧倒され、三條河原・竹林・大乗院本堂での立ち回り。殺陣のシーンがたくさんあり、時代劇大好き人間として、大満足のお芝居でした。
美しい梅松さん、月様への思いがいたい程伝わって参りました。
長谷川一夫さんの映画を何回も見てから、新橋演舞場の観劇をしたので、イメージが先行してしまった。小暮実千代さんの「染八」さんがすばらしく、花柳界の粋な芸者さんを期待していたので「私怨に走る染八」というお芝居の展開にがっかりしてしまいました。男役出身という甲斐京子さんの魅力が半減されたように感じました。

<3階席から>舞台全体が視野に入り、絵のように美しい彩りでした。花道にも気が配られていました。花道が使われる時、右側の席の人は、花道が見えにくいのですが、モニターがあって、その点がカバーされていました。

観客席には、いつもにも増して、男の年輩の方多く見受けられました。期せずして、演劇界には『男の色気を出し、柔と剛を演じわけ、役者の腕が重視されるこの役に、舟木は果敢に挑んだ。新国劇より大川橋蔵版に近いが、舟木は辰巳柳太郎の当たり役を継承できる実力をつけてきた』という劇評も掲載され、新国劇を好まれる方をも惹き付けた演目だったのだなぁと感じました。

お芝居の後の感想。娘、曰く「『梅一輪、手折るのが楽しみだ』は、おかしい。ファンに気を使った脚本だ」と。まぁ、冷静に考えればそうかもしれないが(苦笑)、いいではないの、20歳の娘を持つ母親だって、舟木さんの前では、純情可憐な乙女になっちゃうんです。(あ〜。無理がある^^;)          

観劇日から3週間余。すぐ感想をまとめれば良かったのですが、2回の観劇で、印象に残っているところだけを書きとめました。日にちが経って、記憶が交差してしまいました^^;              (03.11.12記)